部族民通信ホームページ   投稿2023é年10月15日  開設元年6月10日
主宰蕃神(ハカミ)義男        部族民通信  ホームページに     
神話学 生と調理(Le cru et le cuit)2  本文 1ボロロ族の歌  








 


コンゴウインコ
尾羽根を装身具
に用いる
本書挿絵
基準神話M1火と水の起源 バイトゴゴの冒険 (ブラジルマトグロッソ、ボロロ族)

M2水、服飾、葬式の起源(ボロロ族)に飛ぶ
M3洪水の後虐殺(ボロロ族)に飛ぶ 

第一楽章は2部形式でその1がボロロ族の歌。2部はジェ(ge語族)の変奏曲。神話学で取り上げられる800を越す全神話( Mとする、第4巻「裸の男」の最終神話番号はM813)の基準となる神話M1金剛インコ(Arara)の巣あらし(別の紹介で火と水の創造)Bororo

 « Dans des temps très anciens, il advint que les femmes allèrent en forêt. Un jeune garçon suivit sa mère en cachette, la surprit et la viola. Quand celle-ci fut de retour, son mari remarqua les plumes arrachées, encore prises à sa ceinture d’écorce » 43頁)昔々、森に入った母を少年(ヒーロー)が追って犯した。夫は、妻の腰ベルトに挟まれている羽飾りに気付いた。

以下は後続(引用無し):成人の通過儀礼で少年達を集めダンスをさせた。その羽と同じ柄を付けるのは己の子と目撃し、2度目のダンスでも同じ結果が露わとなった。妻と子の近親姦を恨む。復讐に「精霊の巣」から楽器(hocchet=マラカス)を盗み、持ち帰るよう子に命じます。この困難に子は祖母に相談する。ハチドリ(oiseau-mouche)の助けを借りよと答えが返った。ハチドリは楽器を吊す紐を切った。ジョと音を立て川に落ちる、精霊が飛び出してきたが鳥が回収して子に渡す。父はさらに中マラカス、小マラカスを盗むよう命じ、鳩とバッタの助けを借りて盗みに成功し、父に渡した。

父は金剛インコAraraの巣あらしを命じた。子は雛の代わりに飛礫を父に投げた。はしごを父に外され、絶壁に取り残された。トカゲを補食し飢えをしのぐ。余ったトカゲを紐で身体にくくると腐敗し、悪臭で気を失った。ハゲワシについばまれて尻がなくなった。そのあと何故かハゲワシ達は少年を担ぎ上げ « les oiseaux se font sauveteurs : avec leur bec, ils soulèvent le héros et le déposent doucement au pied de la montagne » 44頁)優しく山の麓に送り届けた。

トカゲに変身して村に戻った « il emprunte l’apparence d’un lézard dont le manège intrigue longtemps la vieille femme… » その細工姿が祖母‥他の縁者を欺いた(同)。祖母の小屋に住み着き、頃合いを見て人間の姿に戻る。« une violente tempête accompagnes d’un orage, et tous les feux du village furent noyés, sauf celui de la grand-mère » 洪水が発生し常夜火の全てが消えた、祖母が大事に守った火の一灯だけ残った。祖母に火を村人が貰いに来る。すると父の第2妻(義母)が死んだ筈の義理息子を認め、大急ぎで夫に注進する。父は息子の帰還を祝った。ヒーローは父を誘い出し、牡鹿に変身して沼に突き落とした。父はピラニアに食べられた。 « celle-ci (victime) est dévorée par les esprits qui sont des poissons cannibales. De retour au village, le héros se venge aussi des épouses de son père (dont l’une est sa propre mère) » 返す足で実の母も含め、父の妻達を殺した。
(ヒーローの名はバイトゴゴとM2で伝わるのでその名を用いる)

基準神話(M1)は ;

ヒーローの母が森に入った理由は息子の成人儀礼の通過象徴となるペニスケースの材料を切り出すため。実母が採取、加工する。それを装着して壮丁となり、男屋に寝泊まりする。男屋に入ると実家に出入りするのははばかれる。通過儀礼を迎える年頃ならば性徴は芽生える。母との別れはもう間近、母が森に入ったと見届け、息子が(頻繁、あるいは滅多に)犯す禁忌破りがこの時にも発生と印象づけている。さらに腰ひもに取り付いた羽飾りを、ためらい隠さず夫に見せつける妻の態度は挑戦的。近親姦の禁忌を気にしていないかの印象が窺える。

 « Elles pleuraient en poussant des cris comme pour la mort d’un être chéri, parce que le garçon se détachait de la société des femmes » 訳:母親達は(儀礼の荒行に虐げられる)子の姿に悲鳴を上げ、あたかも親愛の者の死であるかにいたわる。その日から息子は女の世界から離れる(52) 。 成人する子との別れと悲しみ、母の心の微細な言い回しの内にも上下婚(母子たわけ)が「昔々には」発生したと神話が語る、とレヴィストロースが示唆している、と読みたい。

このあとボロロ族の民族誌に移る。ブラジルの中央台地マトグロッソの南方に居住地を持つ有力部族、母系 (matriarchal) 集団、盛時の人口は3000人を超えていた。その邑落は中央に成人男が居住する「男屋」を配し、周囲を女小屋が円周に囲む。(架空の)線で南北に等分され、北がセラ部南はツガレ部。各部は4等分されそれぞれが支族(clan)として特定されている。さらに支族は上中下の階層ヒエラルキを持つ。すなわち邑は32の支族と階層に分けられている。

この分類は身分、儀礼次第、行動、婚姻を規定します。同じ部の間での婚姻はない。セラの男はツガレ部の特定の支族の娘としか結婚できない。民族学の用語を借りると部は外婚(exogamie)、支族レベルで階層まで区切った内婚(endogamie)の婚姻制度。着用する飾り物にも社会身分(支族と階層)の規定が厳密である。長く優美な金剛インコの尾羽は儀礼に必須だが、男の属する支族と階層でいかに飾るかの様式が決まる。ボロロ語で「豊か」の意味は継承した社会地位が高く、それだけ豪華な尾羽を頭に飾れる権利を持つとの意味である。

かつては人口3000との報告があった。均等に配分されているとすれば、32の単位は100人ほどの構成となっていただろう。男女が50人見当。適齢期の男女はそれぞれ10を数えられるか、この制度は成り立つだろう。レヴィストロースが訪問した時期、20世紀初頭での総人口は400未満だった。すると対向支族は婚姻可能な娘を用意できるか、難しい場合もあるだろう。悲しき熱帯では人口減少と婚姻制度の維持が難しい社会が描写されている。

成人の通過儀礼(initiation)の過酷さ、羽根飾りの意味合い、金剛オウムの巣の位置、ペニスケースの説明 ; 金剛インコの価値は。尾羽が美しく儀礼では特定の男の頭飾りに供される。鳥の巣あらし(幼鳥を盗む)では父がハシゴを掛けて子を樹上に登らせる。子は恣意的に雛を拐わず「雛は見えない」と父親に告げる。あるいは(M1以降)では「失敗」し、息子は父に雛を渡さない。インコを渡さないとは親の社会地位を貶める行為です。父に対抗し自身の地位を確立せんが為、しかしこれは反社会です。












 

南米先住民、若者のダンス
(写真はNPO法人、熱帯雨林
保護団体から借用)




























バイトゴゴが取り残された
と伝わる絶壁。
写真は本書から
   

神話2M2)ボロロ族の「水、服飾、葬式の起源」が取り上げられます。

M2要約:昔々、ボロロ族は二人の酋長(ツガレ部)に統治されていた。その一人バイトゴゴの話。妻が森に入って同じセラ部の男に犯された。母を追っていた子に目撃され、子は父バイトゴゴに森の奥での密通を伝えた。復讐に弓をとり男に肩、腕、胴…と矢を放し殺害した。その晩、妻を扼殺して死骸を小屋の床下に埋めて出奔した。子は殺されたと知らず母を求め、バイトゴゴは鳥になり放浪する。森に変身して川と湖を創り(水の起源)村に戻ると決めた。村の統治はもう一人の酋長、彼の兄弟格に託されていた。バイトゴゴの帰還にともない、同じ部から二人の酋長体制が戻った。二人が別の部(セラ部)に向かう時は必ず飾りや楽器などの贈り物を持ち運んだ。最初の訪問で彼らの父親(=ボロロの婚姻規定では父と子は別の部に属する)は着飾り(飾りの起源)、歌で祝して迎え飾り物を送った。神話は謎めいた言葉「たくさんの贈り物を持ち込む者は殺されない、少ない贈り物を持ち込む者は殺される」で終わる。

子が隠れ母を追う、森での近親姦の発生を目撃する(同じ部の男と女は兄弟姉妹とみなされる)、夫の復讐殺人、そして放浪。ヒーローが近親姦を犯すのではなく妻に発生する。M1とは世代が逆転している。M1では明確でなかった二の部(ツガレとセラ)の並立が出てきます。贈り物が豪華でなければ殺されるとは不吉な終わり方です。

 



 ボロロ族の火と水の
創造神話(M1)が新大
陸の全神話の基準となるのは「天地創造」
を謳う故に。バイトゴゴが創造したのは狩猟の技術、生肉喰らいを捨て焼肉、加えるに水と大地の創造です。
聖書では神の天地創造が冒頭に置かれる、

 

M267頁に要約されています。

« Un abus dalliance (meurtre de lépouse incestueuse, privant un enfant de sa mère) complique dun sacrilège qui une autre forme de démesure=中略=provoque la disjonction des pôles ciel (enfant) et terre (père)=中略=Baitogogo rétablit le contact entre morts et vivants, en révélant aux seconds les ornements et les parures corporelles, qui servent lemblème à la société des hommes, et de chair spirituelle à la communauté des âmes » 67頁)

訳(ヒーロー・バイトゴゴの行為について):同盟の破壊(近親姦を犯した配偶者を殺害して、息子から母を取り上げた)、居屋の地下に妻の死骸を埋め痕跡を隠したやり方はさらなる冒涜、死者の再生(村の中央に埋めての後に掘り起こして川に流すが決まり)を封じた。母が殺されたとも知らず彷徨う子が鳥に果て、森に化けた父とは天地に分離した。

森になったバイトゴゴは水を創造して空と地の交流を創造し、« Le héros quitte le village et mène une vie errante dans la brousse. Chaque fois qu’il s’arrête il provoque l’apparition des lacs et des rivières, car à cette époque l’eau n’existait pas sur la terre » 英雄は村を離れ森に彷徨う日々を過ごす。立ち止まるごとに湖と河が創造された。その時代にはまだ水は存在しなかったからである。水の創造。

バイトゴゴは生者と死者の交流も道筋を立てた。村には戻らず父に支配を任せた。村の東西には(儀礼の中心となる精霊)バカロロとイツボレが棲む(あの世の霊廟の管理者ともされる)。それらは過去の首長の成り代わりで、名分があるときにしか村を訪れない。名分とは彼ら(過去首長)が« Devenus les deux héros Bakororo et Itubore, les anciens chef ne reviendront plus visiter leur concitoyens que pour leur faire don des parures » ツガレ部の首長(バイトゴゴの父親、実はバイトゴゴが憑依)に贈り物を持ち込む儀礼。過去首長は支族(8支族が2部に分かれる)の現の族民を代表する。精霊を介して族民がツガレ部首長に貢ぐといえる。(イツレボに憑依した)バイトゴゴは « Il ne tua pas ceux qui apportaient beaucoup, mais il tua qui en avaient apporté peu » 多くの贈り物を持ってきた彼らは殺さなかったが、少ない贈り物の者は殺した。

M1は旧来社会の破滅、火と新しい社会の創造を語った。M2は水と大地の創造、村落の始まりを説く。いずれも「近親姦」をきっかけとしている。あの世の東西にある霊廟に住む神、これがボロロ族信仰の根底である。死者が出ると霊廟から死神が訪れ、死者をあの世に導く(悲しき熱帯ボロロ族の章)

 M3洪水の後虐殺(ボロロ族) 

 « Après un déluge, la terre se repeupla à niveau, Meri, le soleil, eut peur et chercha comment il pourrait réduire le nombre=中略=il les tua à coup de flèches, Ce qui lui valut le surnom de Mamuiauguexeba, cause la mort » (59)

訳:洪水の後、人は世に満ちた。Meri(太陽)は恐れ、どうしたら減らせるか考えた。

太陽は全ての族民に大河を、壊れやすい小舟で渡るようし向けた。案の定、小舟の浸水に族民は難儀した。びっこの(contrefait原文)アカルイオボカドリ(ヒーロー)は遅れて着したので免れた。激流に流された者達は縮れ毛、静水に溺れた者達は直毛。アカルイオボカドリは彼らを引き揚げ、太鼓を叩いて蘇生させた。まずBuremoddodogue族の者を蘇生させて、そのあと7gueの接尾語を持つ者達を選んだ。7の者達にはお礼の贈り物に手厚さを求め、約束出来ない者達を殺した。この殺戮行為によりアカルイオボカドリは殺戮者の名が冠せられることになった。

洪水神話にレヴィストロースは「連続」と「不連続」の原理を持ち出して、神話の核心(schèmes、スキーム)に迫ります。ボロロ族の社会の起源を語っていると。川渡りの試練=アカルイオボカドリの奸計で脱出を急いだ部族が間引きされ、8の支族に分離されたのが部族の始まりとM3が語る。さらに蘇生させて間引きし殺戮する場面では「贈り物が少ないから殺した」族長ボカドリの不吉な言い訳が出た。いずれも人口の増大という連続に、部族の再構成、不連続に矯正する「文化」手段です。

 « Par rapport à ce double aspect de M3, M2 se placent à un niveau intermédiaire » 2の神話を見比べると2の差異状況(人々の形状の差異と社会それぞれの差異)に加えその中間があると知る。 « Il semble que les deux mythes se réfèrent à trois domaines, chacun pour son compte originellement continu, mais dans lesquels il est indispensable d’introduire la discontinuité pour pouvoir les conceptualiser » 2の神話は3の差異分野を語るのであるが、そもそも、それぞれが連続性を保っていた。しかし分野を概念化するには不連続を導入しなければならなかった。

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図:鳥の巣あらし 第2巻蜜から灰への挿絵(28頁)
   3の連続分野は訳文の通り。概念化 « conceptualiser » とは文化の範疇に繰り込むこと(と解釈する)。同じ部族社会で人々形状が異なる(レヴィストロースが悲しき熱帯で報告している)背景にも、「文化」が介在した。これを2の神話が « schème » としている。

他民族の神話を介し、解釈を進めます。 « Limitée aux Bororo, linterprétation est fragile. Elle acquiert cependant plus de force quand on la rapproche de linterprétation analogue de mythes provenant dautres populations » (61) 抄訳;ボロロ族神話のみで解釈しても弱いから、似たような神話を拾って比較すると理解も深まる。

比較したのはジェ語族のOjibwa族とTikopia族。文引用は省略され解説のみ。Ojibwaでは洪水の前に6の支族が「接続」して居住していた。各支族は盲目(に扮する)先祖神を奉るが、一の神がバンドを外し盲目でないと表明してしまった。五の神は彼を支族の民とともに追い出し、5の支族の構成に縮小して、不連続域を創成した。Tikopia族では「これまでは食べ物はその種類が数えられない状態だった。数えられないは混乱の原因、この「連続」から脱出するには食べ物の数に制約を入れて、支族をその数に合わせよう」。選んだ数は6。無数の支族を消滅させて(殺戮して)4支族の構成に「糺した」。

ボロロ族神話は上記と異なる。「部族の相貌、習俗などが連続している現状が人口の多い理由だけれど、突き詰めれば小さな支族が数多くあるから(自然)。故に弱小を殲滅して、8の上位支族だけにすれば不連続世界となる(文化)」とアカルイオボカドリが故意に乗船に遅れるなど策略を巡らせた。贈り物が少ない部族は弱小なので殺戮された。優勢有力を生き残りの基準点にしたボロロの文化にかける知性が光る。   

漁労(毒流し漁)は文化の範疇です、ここにおける文化と自然の対立を以下に分析している。

 « par conséquent, le poison de pêche peut être définie comme un continu maximum qui engendre un discontinu maximum, ou, si lon préfère, comme une union de la nature et de la culture qui détermine leur disjonction, puisque lun relève de la quantité continue, l’autre de la quantité discrète » (同書285)

引用にあるpoison de pêche はマトグロッソ、アマゾニアでの毒流し漁で使われる植物由来の毒。discrèteは一義で「控えめ」。 訳:毒流し漁の収穫は最大連続と規定され、それは最大不連続を生み出す(訳注:川をせき止め毒を流す、効果「一流し打尽」を毒がの効果、全てを捕る(continu)。後には一匹の魚すら残らない。

Naturecultureは相容れない。一方(nature)が連続の量を排出し、片方(culture)は不連続(慎ましやかに年に一回、毒流し漁の規制、決まった場所で年に一回しか実行しない)取るに足らぬ量(文化)しか漁獲しないから、自然と文化は並立できる。

生と調理(Le cru et le cuit)2  本文 1ボロロ族の歌 了(2023930日)









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生と調理62頁、南米神話のノアの箱船と読める。3部族の間引き方法、左が洪水前の連続居住。右に間引き後の形態。ボロロ族は最下、無数の支族が8に集約されています。自然状況の産めよ増やせよから部族構成(支族の込み具合)が調整さる様が見える。
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