部族民通信ホームページ   投稿2023é年10月15日  開設元年6月10日
主宰蕃神(ハカミ)義男        部族民通信  ホームページに   神話学のページに  
生と調理(Le cru et le cuit)  本文 4 作法のソナタ  
   
ボロロ族神話を通して天地創造、水と火の取得、社会の確立を採り上げていた。神話の流れで社会が出来上がって制度が創生されます。導入過程での諍い、自然のままの放銃さを求める人と、文化が強制するしきたりを大事とする人の軋轢が主題となります。文化を侮蔑する族民の運命を取り上げています。

M16 Mundurucu族:origine des cochons sauvages野ブタの起源(Mundurucu族はTupi語族に属すが居住地はジェ語族のKayopoに近接している)

カルサカイベは息子コランタウを連れ狩猟キャンプ地の近くに居を構えた。キャンプ地の族民に姉妹を与えている。族民は、野ブタ(caetetu種)の狩りにひがな野に出向いた。カルサカイベはinhambu(ウズラ種)猟に専念していた。

 « Et chaque jour il envoyait son fils au campement de ses sœurs pour échanger des inhambu contre les caetetu tués par leurs maris mécontents du procède, les tantes du garçon lui font honte lui jetant seulement les plumes et les peaux… » 93頁)

訳;毎夕、彼は息子をキャンプ地に向かわせ、幾羽かのウズラとその日しとめた野ブタ全頭との交換を申し立てさせた。彼ら(カルサカイベの義弟)は納得しない。兄の手口に不満を持つ叔母はウズラの対価にはこれだ!「羽片とブタ皮」を投げつけた。

泣いて手ぶらで戻ったコランタウを見てカルサカイベは「キャンプ地を羽で取り囲め」命じた。その内部にタバコの煙を雲にしてくゆらせた。

 « Les habitants sont étourdis quand le demiurge leur crie : <Mangez votre nourriture> ils croient comprendre qu’ils leur ordonnent de copuler : aussi se livrent-ils aux actes d’amour en poussant les grognements habituels. Ils se transforment tous en cochons sauvages » ()

住民は地神(カルサカイベ)が発した「お前等、似合いの食物を喰らえ」の声に幻惑させられ「今すぐに交合せよ」との命令と理解して、ブーブー啼き声を発しておのおのが交尾し始めた。そして野ブタに変身してしまった。この野ブタはQueixada属。

カルサカイベは野ブタに変身した一族を閉じ込め、一頭ずつ柵の踊り場に出し屠殺し村に持ち帰った。 « Dairu (le décepteur) arrache à Korumtau le secret de l’enclos ; mais il laisse les cochons s’échapper » ダイル(騙し屋)はコランタウから囲みの秘密を聞き取った。豚を盗もうとしたがしくじってすべてが逃げてしまった。(野ブタCaetetuはペカリ属、いつでも何頭狩っても咎められないとの言い伝えがある。Queixada属の野ブタには狩りの段取りと制限が設けられる) 


 

族民が狩猟するcaetetu属
ペカリ野ブタ










カルサカイベは義弟に
ウズラ3羽との交換で
お前らが今日仕留めた
野ブタを
残らず出せと迫った



 

M18Kayapo族(ジェ語族の有力部族):野生豚の起源。

 « Campent à l'écart avec son fils, le héros culturel Ooimbre, envoie celui-ci, demander des provisions de bouche à ses parents maternels. L'enfant est mal reçu et pour se venger Ooimbre confectionne un charme avec des plumes et des et des épine, et s’en sert pour transformer tous les gens du village en pécari » (94) 英雄オインベは息子とともに村から離れて露営していた。息子を母の係累に腹の足しにを求めるよう遣わせた。子は酷く扱われた。オインベは羽と棘出で飾り作った。子を侮蔑した人々を、その飾りを用いて、豚に変えて閉じこめた。(以下は引用なし)オインベはこれらブタを必要に応じて一頭ずつ屠り、食していた。ある一人(妻の兄弟)が秘密を探り当て毎晩盗んだ。ヒーローは怒って全頭を野に放った。これが野ブタの起源。

(かつて野ブタ群れを囲いに閉じこめる狩り技法があった。一頭ずつ屠り食していた。その名残が神話に語られているとレヴィストロースは論じている)

神話引用は続く M20 ボロロ族:origine des biens culturels装身具の起源

 « jadis les hommes du clan bokodori (moitié Cera) étaient des esprits surnaturels qui vivaient joyeusement dans des huttes, appeléesnid d’aras>. Quand ils désiraient quelque chose, ils envoyaient un des jeunes frères auprès de leur sœurs, pour qu’elle l’obtienne de son mari » 100頁)

かつてcera部のbokodori支族の男達は超自然の精霊だった。インコの巣の小屋に住み、毎日を楽しく過ごしていた。必要な物が出る度に幼い兄弟を村に送り、妹(姉)に「夫が収穫したものから出してくれ」と無心していた。

 « Le miel que leur beau-frère les invita à consommer était visqueux et plein d’écume, parce qu’il avait copulé avec sa femme en allant le récolter » 妹が渡した蜂蜜は泡がたち酸っぱかった。なぜなら採集の前に夫が妻に姦淫(禁忌)したから。舐めてしまった兄弟は禁忌破りを怖れ、水底に隠れる石を探すと決めた。狙いの石を手にできた兄弟は、貝や硬木を加工して首飾りを作った。この成功で兄弟の笑いが変化した。  « Le succès leur arrache un rire triomphal, distinct du rire exprimant une gaieté profane.  Ce rire forcé ou rire de sacrifice, est appelé rire des âmes. La locution désigne aussi un chant rituel » 彼らは凱旋の笑いを自己のものにできた。それはおかしさで発する世俗の笑いとは異なる。「犠牲の笑い」精霊の笑い(rire des âmes)と呼ばれる。この言い方は儀礼の歌をも示す。

そんな笑い方など聞いたことのない義理の弟は、妻を遣わし小屋を覗かせた。女は男屋を覗いてはならない、またしても禁忌が犯された。とばっちりを被るはずの兄弟達は、出来上がった装身具を姻族の皆に配り、火に飛び込んだ。かろうじて残った弟は飛び上がって金剛インコに変身した>

文化創造過程での非文化と文化のせめぎあい。3の神話の核心を探ると ; 

 
 






 

M16)妹を妻に出した側カルサカイベが義理兄弟の収穫を「当然の取り分」として要求している、うずらと豚の交換は婿の役務(prestation)と受け止めるべきで、カルサカイベは文化として正しい。義理兄弟は文化の規制を知らない、守らない。拒否したのは義兄弟、子を辱めた姉妹、子には叔母らは文化の規範から外れる。豚になった。

M18のオインベは「息子」を遣いにだして姻族、妻側の支族に食物を無心した。息子には母の姉妹に求める権利があるのだろう。そして断られる。これも文化の範疇から外れ、豚に変身させられた。

M20食べられない蜜を出す、男屋を女が覗くなど禁忌破りが重なる。男たちは贖罪の儀礼を開く(飾り物の起源)、笑いの歌を発明する。

M16~20を伝える部族(Mundurucu, Kayapo, Bororo)は母系社会です。父親は母系を引きずるから妻が産んだ息子とは出自が異なる。また己の姉妹の婿、義兄弟とも出自が異なる。 « lhomme en possession de sœur ou de fille, condamné à nouer des liens avec des êtres dont la nature lui paraît être irréductible à la sienne» 105頁)訳;姉妹あるいは娘を所有する男とは、彼の立場と相入れない男との連携を形成する運命に呪われている。

女をやり取りしての姻戚関係、贈る側も貰う側も男は壮丁同世代、系統が必ず異なる。対立(妥協できないirréductible)を孕む同盟なので 、ここに女が入り込めば不協和が高鳴る。しきたりに従わない相手に俗神が説教を垂れても聞く耳をももたない。

 « Toujours assimilables à des animaux, ces êtres se répartissent en deux catégories: celle du jaguar, beau-frère bienfaisant et secourable, donateur de la civilisation : et celle du cochon beau-frère malfaisant, utilisable comme gibier »105頁)これら(妻を娶った側)人物は動物に比定される。その1がジャガーで、好意的、義理の兄となってヒーローを助け文明をもたらした。もう一方が野生豚、義理の兄弟ながら(女にそそのかされて)悪意を持って規範を破った。狩りの獲物としての価値しかない。

訳注:ジャガーは前楽章(テーマと変奏)のM7~12に登場する。人に文明(火と調理)をもたらした。またヒーローをして(文化への移行を快く思わない人間である己の)妻を殺させる。

これら3M16,18, 20)の神話にはprotagoniste / propriété(登場者と属性)の共通性から伝播は明瞭とレヴィストロースは判断している(M7~12でジャガー家に迷い込み、ジャガー妻に虐待される筋立てが、M16,18では息子甥が悪態をつかれる)。(M20、ボロロ族)には特異性が目立つ。「非礼側が礼儀遵守側から成果を掠め取って勝利する」M16,18で罰を受けるのは非文化側、これと正反対です。この疑問をレヴィストロースはどう解くか。

 

M20の特異性をかく語る; « Lanalyse de M20 vérifie que, conformément à notre hypothèse, le mythe bororo respecte le code des mythes ge et tupi correspondants (M16, 18) mais au prix dune distorsion du message, lequel concerne lorigine de certains biens culturels » 102頁)

M20を分析すると、私(たち)の仮説を肯定する方向で、この神話はジェ語族、チュピ語族の同等の神話(例:M16, M18)が用いる符丁(code)を採用していると確信するが、メッセージの伝わりにある種のねじ曲がり(distorsion) の代価を払っている。これは幾つかの文化財産に関係している。(文化財産を制度、しきたりなどの総体と考えたい。母系集団であるが、ボロロ族の婚姻は他部族と比べ特別であるとして以下に考える)

1     ボロロ族は支族内婚(婿を送り出す相手側から婿を貰う)を実施しているから、贈り手が貰い手ともなる。故に賦役prestation責務が多いとの神話はない。他部族が遵守する女の贈り手の要求、貰い手の責務付き同盟ではない。

2      インコが族民に嫁と(儀礼用)装身具、儀礼の次第(聖なる笑い)を与えた。文化創造において火の発見(ジャガーから盗む)と同等の価値があろう。すると;インコをカルサカイベ(姻族を野ブタに変身させた俗神)と比定するのではなく、ジャガー(英雄バイトゴゴを養子にした)の立場と重ねる要がある(M2神話:ジャガーの養子になって養母(ヒトの女)を殺して、火を盗み文化を創成した)。

3      Wundurucu族の野ブタ起源神話(M16)がボロロ族に伝播して(M20M21を作成させた。レヴィストロースが語る)ボロロ社会の中で語られる過程で(妻を殺すにまかせ火まで盗まれ)自然に戻ったジャガーの宿命、をインコに重ねたのであろう。インコには儀礼に関する文化財を人に伝授して、自然に戻る必然があった。

 伝播で生じたdistorsion(ねじ曲がり)とは母系ながら非母系居住Wundrucuru族の神話(女の受け手に役務が生じる)から、母系かつ母系居住の2の支族で女をやりとりするボロロの族内婚の環境が、婿の役務無視からオウム(ジャガー)の自己犠牲に変化した。

M21ボロロ族 野ブタの起源を紹介する(原典引用はなし)

昔々、男達が漁に出ても魚1尾も持ち帰れない日が続いた。女達に笑われたうえ「これからは私たちが魚を獲る」と宣言されてしまった。女達は漁に出るたびに大量の魚を持ち帰り、男共を見くびる事になった。男達は奸計を疑り、鳥を遣わせ見張らせる。カワウソと女どもの密会が露見してしまった。(ruse:策略、計略の意味。密会とした)。翌日、男達はカワウソをおびき寄せ、一匹を除き殺戮した。女の大漁は止み、今度は男が女をあげつらう番になった。女は面白くない。トゲの混じった汁を男に供した。一気に呑んでトゲが刺さり男は「うっうっ」としか発声できない喉になった。そして野ブタになったとさ。(102頁)

獣と密会する自然女に肩を持つ、魚を持ち帰れない男どもは文化生活を送る価値がないとボロロ族は判定しているのか?

生と調理(Le cru et le cuit)  本文 3 作法のソナタ の了 (2023年9月30日)

 
 





俗神カルサカイベの求めは当然で
応じない義弟は「婿の役務」を果たさ
ない、(文化の制度)に従わないとして
野豚に化けさせられた。上はQueixada
属野ブタ、本書挿絵。
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