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(M16)妹を妻に出した側カルサカイベが義理兄弟の収穫を「当然の取り分」として要求している、うずらと豚の交換は婿の役務(prestation)と受け止めるべきで、カルサカイベは文化として正しい。義理兄弟は文化の規制を知らない、守らない。拒否したのは義兄弟、子を辱めた姉妹、子には叔母らは文化の規範から外れる。豚になった。
M18のオインベは「息子」を遣いにだして姻族、妻側の支族に食物を無心した。息子には母の姉妹に求める権利があるのだろう。そして断られる。これも文化の範疇から外れ、豚に変身させられた。
M20食べられない蜜を出す、男屋を女が覗くなど禁忌破りが重なる。男たちは贖罪の儀礼を開く(飾り物の起源)、笑いの歌を発明する。
M16~20を伝える部族(Mundurucu, Kayapo, Bororo)は母系社会です。父親は母系を引きずるから妻が産んだ息子とは出自が異なる。また己の姉妹の婿、義兄弟とも出自が異なる。
« l’homme en possession de sœur
ou de fille, condamné à nouer des liens avec des êtres dont la nature lui
paraît être irréductible à la sienne» (105頁)訳;姉妹あるいは娘を所有する男とは、彼の立場と相入れない男との連携を形成する運命に呪われている。
女をやり取りしての姻戚関係、贈る側も貰う側も男は壮丁同世代、系統が必ず異なる。対立(妥協できないirréductible)を孕む同盟なので 、ここに女が入り込めば不協和が高鳴る。しきたりに従わない相手に俗神が説教を垂れても聞く耳をももたない。
« Toujours assimilables à des animaux,
ces êtres se répartissent en deux catégories: celle du jaguar, beau-frère
bienfaisant et secourable, donateur de la civilisation : et celle du cochon
beau-frère malfaisant, utilisable comme gibier »(105頁)これら(妻を娶った側)人物は動物に比定される。その1がジャガーで、好意的、義理の兄となってヒーローを助け文明をもたらした。もう一方が野生豚、義理の兄弟ながら(女にそそのかされて)悪意を持って規範を破った。狩りの獲物としての価値しかない。
訳注:ジャガーは前楽章(テーマと変奏)のM7~12に登場する。人に文明(火と調理)をもたらした。またヒーローをして(文化への移行を快く思わない人間である己の)妻を殺させる。
これら3(M16,18, 20)の神話にはprotagoniste / propriété(登場者と属性)の共通性から伝播は明瞭とレヴィストロースは判断している(M7~12でジャガー家に迷い込み、ジャガー妻に虐待される筋立てが、M16,18では息子甥が悪態をつかれる)。(M20、ボロロ族)には特異性が目立つ。「非礼側が礼儀遵守側から成果を掠め取って勝利する」M16,18で罰を受けるのは非文化側、これと正反対です。この疑問をレヴィストロースはどう解くか。
M20の特異性をかく語る; « L’analyse de M20 vérifie
que, conformément à notre hypothèse, le mythe bororo respecte le code des
mythes ge et tupi correspondants (M16, 18) mais au prix d’une
distorsion du message, lequel concerne l’origine de
certains biens culturels… » (102頁)
M20を分析すると、私(たち)の仮説を肯定する方向で、この神話はジェ語族、チュピ語族の同等の神話(例:M16, M18)が用いる符丁(code)を採用していると確信するが、メッセージの伝わりにある種のねじ曲がり(distorsion)
の代価を払っている。これは幾つかの文化財産に関係している。(文化財産を制度、しきたりなどの総体と考えたい。母系集団であるが、ボロロ族の婚姻は他部族と比べ特別であるとして以下に考える)
1 ボロロ族は支族内婚(婿を送り出す相手側から婿を貰う)を実施しているから、贈り手が貰い手ともなる。故に賦役prestation責務が多いとの神話はない。他部族が遵守する女の贈り手の要求、貰い手の責務付き同盟ではない。
2
インコが族民に嫁と(儀礼用)装身具、儀礼の次第(聖なる笑い)を与えた。文化創造において火の発見(ジャガーから盗む)と同等の価値があろう。すると;インコをカルサカイベ(姻族を野ブタに変身させた俗神)と比定するのではなく、ジャガー(英雄バイトゴゴを養子にした)の立場と重ねる要がある(M2神話:ジャガーの養子になって養母(ヒトの女)を殺して、火を盗み文化を創成した)。
3
Wundurucu族の野ブタ起源神話(M16)がボロロ族に伝播して(M20とM21を作成させた。レヴィストロースが語る)ボロロ社会の中で語られる過程で(妻を殺すにまかせ火まで盗まれ)自然に戻ったジャガーの宿命、をインコに重ねたのであろう。インコには儀礼に関する文化財を人に伝授して、自然に戻る必然があった。
伝播で生じたdistorsion(ねじ曲がり)とは母系ながら非母系居住Wundrucuru族の神話(女の受け手に役務が生じる)から、母系かつ母系居住の2の支族で女をやりとりするボロロの族内婚の環境が、婿の役務無視からオウム(ジャガー)の自己犠牲に変化した。
M21ボロロ族 野ブタの起源を紹介する(原典引用はなし)
昔々、男達が漁に出ても魚1尾も持ち帰れない日が続いた。女達に笑われたうえ「これからは私たちが魚を獲る」と宣言されてしまった。女達は漁に出るたびに大量の魚を持ち帰り、男共を見くびる事になった。男達は奸計を疑り、鳥を遣わせ見張らせる。カワウソと女どもの密会が露見してしまった。(ruse:策略、計略の意味。密会とした)。翌日、男達はカワウソをおびき寄せ、一匹を除き殺戮した。女の大漁は止み、今度は男が女をあげつらう番になった。女は面白くない。トゲの混じった汁を男に供した。一気に呑んでトゲが刺さり男は「うっうっ」としか発声できない喉になった。そして野ブタになったとさ。(102頁)
獣と密会する自然女に肩を持つ、魚を持ち帰れない男どもは文化生活を送る価値がないとボロロ族は判定しているのか?
生と調理(Le
cru et le cuit) 本文 3 作法のソナタ の了 (2023年9月30日)
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